2016/07/27 13:40

『数学は美しい』



さて、数学は美しいのか?

受け売りの話であるが知人の建築士はが云うには、
ヨーロッパの古代建築は数式で計算され、
その上で施工されているらしい。

その建築士は私の高校時代の同級生なので、
頭脳の程度はたかが知れているが、建築が大好きで一級建築士の
ライセンス迄取った程なのであながち嘘では無いと信じたい。

美しいかどうかは解らないが、私達の身近にある『ネジ』
も数式で計算されて作られている。

『ネジの美学』


ほとんどの人がネジなんてどうでもいいとお考えであろう。
ところがネジの話は尽きる事がない。

漢字時計の機械式仕様のムーブメントには
『マイナス・ネジ』が多用されている。

実用性を考えると『プラス・ネジ』がいいはずなのだが
何故なのか理由は解らない。

一説によると、ゴミが溜まった時に掃除がし易いとか。
しかしながらマイナス・ネジは扱う側にとっては非常に使い辛い。
左右に滑って何度部品を傷付けて来たことか。

しかし、美しさではマイナス・ネジが上である。
もしも私が機械式時計のムーブメントをデザインや設計をするならば
マイナス・ネジを多用するであろう。

『理解不能な女神』


強引なこじつけではあるが、以前に登場した私の彼女(?)
この言い方は非常に抵抗が有るのだが、話の流れで仕方ない。

私のその彼女には『特別なプラス・ネジ』が使われていた。
シトロエンDS21 1971年式である。

アルファベットの『DS』の発音は『ディーエス』
フランス語で女神は『deesee』と書き、読みで『デエス』と言うらしい。
発音が似ているので、その理解不能な車は『女神』と称された。

特別なプラス・ネジとはどんなものかと、今時の検索ツールで
調べてみたが、画像が小さすぎて解りづらいので、
私の記憶のデッサンで我慢頂こう。



プラス・ネジの+を米印にするかの様なデザインの溝が彫られている。
化粧ネジと言う奴である。

メーターパネルの四つ角をその化粧ネジで留めてあるはずが、
私の彼女には左上の角だけ普通のネジが使われていた。

どのタイミングかは解らないが、整備の途中でネジを無くしたのだろう。
特別なネジは入手困難なので普通のネジで代用したのだろう。

よくある話で、私だけの秘密だった。今までは……………

シトロエンだけの特別なプラス・ネジかと思っていた私はある時、
意外な場所で化粧をしたネジを見付けた。



三崎のヨットハーバーである。

『ナヤド』と言う北欧のヨットに同じ化粧ネジを見付けた!
こんな細かい所にまで気を使うのがものつくりなのである。

『本物か偽物か?』


ネジの使い方で本物か偽物かが解ると言っても過言ではない。
また、拘っているか否かがよく解る。

アンティークの家具を見ると、殆どがマイナス・ネジを使用している。

当然修理の跡などが有るはずなのだが、
そこにプラス・ネジを使用していたらアウトである。
ましてやステンレスなんて使っていたら問題外だ。

何故かと言うとステンレスは錆びないからである。
アンティークたる物は時間の経過を楽しむもの、
いつまでたっても新品同様のステンレスなんぞはお話に成らない。

万が一修理の跡にプラス・ネジが使われていたならば、
いろんな事を疑った方がよい、触った職人の程度が低いからだ。

手に入れる前にネジの話をされた場合は例外である。
どうしても手に入らない事はよく有って、仕方ない場合も有るからだ。
マイナス・ネジにしたくても出来なかったと言う事実が大事である、
それだけ気を使っている証拠だ。

『無ければ作るしかない』


漢字時計の箱を作るときにどうしても拘りたかったのが、
『アトリエ自由人』のバッジである。



真鍮で作って、アンティークっぽく錆びさせて、
マイナス・ネジで留める。

このマイナス・ネジが何処にも無い。
(今はやっと虎ノ門辺りの店で見付けたが、在庫が切れればもう終わりだ。)

因みにインターネットでマイナス・ネジを注文しても
『売り切れ』といつものパターンだ。

やはり作るしかない。

長さは5ミリ位でネジの頭は直径5~6ミリ程度。
プラス・ネジは売っているので、頭を切り落として、
頭に真鍮の塊をロウ付け(溶接)して形を整える。
けっこうメンドクサイ作業だ。

仕上がりは写真の通りである。



残念ながら木箱の入手が出来なくなってしまったので、
今は桐の箱に焼き印で漢字時計をお届けしている。

『古い英国車』


昔のイギリスの車にはマイナス・ネジが多用されている。
故に整備が厄介であるが、厄介な原因がもう1つ存在する。
それは『イギリス・インチ』による規格で設計されている事だ。

当然の事ながら、ネジもイギリス・インチで設計されているので、
ホームセンターに行っても売っていない。無くしたら大変だ。

あまり強度を必要としない部分では、
ネジ山を切り直して日本製の『ミリ規格』のネジで対応する。

『イギリス・インチ』と言うからには、『アメリカ・インチ』も存在する。
ハーレーダ・ビットソン等はアメリカ・インチ規格なのでまたメンドクサイ。

『ああ、馬鹿はどこまで馬鹿なんだ!』

とあるバイクマニアの雑誌編集者は、
目の前に置かれたネジを見て、そのネジがどのバイクの何処に使われ、
そして年式や、メッキの種類迄当ててしまうと言う。

そんな馬鹿達が日本の世の中に多数存在する。
日本のものつくりもまだまだ捨てた物ではない。と思う。

『時代は繰り返す』


マイナス・ネジを売ってもらったネジ屋さんの話によると、

某ブランドバック屋さんは、
使用するネジをマイナス・ネジに変えて行くと言う。
やはり美的観点からの選択であろうか?

昔のバックはマイナス・ネジが主流だったらしい。

歴史は繰り返すのか、
私はマイナス・ネジを自作しなくても済むならばそれでいい。

『BMW』


言わずと知れたドイツ製の高級車であるが、このメーカーのネジが曲者。
設計者と現場の隔たりの大きさが産んだ大迷惑とでも言わせて貰おうか?

今現在のBMWのネジがどう言った状況なのかは知らないが、
私がバイクに乗り始めた30年前は、整備士はよくBMWのネジをダメに
したそうである。

原因はこうだ、

設計をギリギリまで詰めて製作して、
決められた力で絞めないと割れてしまったり、
潰してしまったりしたそうだ。

その為、ネジは使い捨て、一度使用したネジは二度と使えない。
逆に日本のネジは何度か使える。

若干のしなりや、歪みを計算に入れているのであろう。

どちらが正解かは、正解など無いのだが、
日本の製品の方が使い易いのは確かである。

そんな事を考えながら、
日本の日本製らしい漢字時計の製作を続ける毎日である。


ものつくリスト  小柳 健一