2016/08/10 14:02

『You はホントに間違って無いのか?』




今は夏、生ビールがうまい季節である。
私が生ビールを覚え始めたのは30代になってから、
正確に言えば旨いものが食べれる様になってからだろうか、
記憶は定かではない。

それまではアルコール類は美味しいと思えなかったし、
一切自分からは飲もうと言う気にすら成らなかった。

イタリアはローマのレストランでミートソーススパゲッティーを頼んだ私は、
飲み物のアイディアが浮かばず、ホットコーヒーを注文してしまい、
周囲の客から妙な視線を浴びてしまった。それはまだ私が二十代の頃である。

今思えばどーのこーのと、昔の恥ずかしい思い出は誰にも有ることだろう。
時間も小遣いもそこそこ有って、ヨーロッパをウロウロしている時に
もっとアルコールを勉強しておけば良かったと、
今更ながらの後の祭りである。

私は呑兵衛では無いが、今はキンキンに冷えた生ビールが好きだ。

冷凍庫で冷やしたグラスに凍る寸前の
それがたまらなく美味く感じる様になってきた。
オヤジになった証だろうか。

ヨーロッパ辺りのオープンテラスで、
昼間から生ビールでダラダラする様はとても優雅でリッチな感じがするからである。
今風に言うと、格好から生ビールを覚えた派である。

『私の後悔と人間性』


後悔の数は大小、山の数ほどあるが、
一番私の人間性に影響を与えたのが生ビールである。

ちょっとこじつけ過ぎやも知れないが、
私には無縁であったはずの生ビールが影響するとは皮肉なものである。

まだ高校生の頃、地元の大衆割烹でアルバイトをしていた私は、
時にホールで客からの注文を受けていた。
そこで私がどうしても納得が行かなかったのが、

『お通し』である。




お客様が食べたいと言っているならまだしも、
注文もしていないのに勝手に持ってきて金を取る慣わしが
どうしても納得が行かなかった。

比較的貧乏な家庭で育った私は、
値段も料理の内容も判らない品を勝手に持って来られて、
代金を請求される事に恐怖さえ覚えてしまう。

店の主人からは、
アルコールを注文してきた客には必ず『お通し』を付けなさい、
と、言われていたが、納得が行かない私はそのお通しを付けず
よく叱られたものだった。

『駅』





竹内まりやの『駅』と言う歌がある。
この歌は恋愛の歌であるが、その恋愛とは全く関係無くその表現を借りると、

今になってあなたの気持ち、初めて解るの痛いほど、私だけ愛してた事を…………

今になって初めて、『お通し』の意味が痛いほどよく解り、
あの時の主人に申し訳無いと伝えたい気持ちでいっぱいである。

今となっては生ビールを頂く時は必ずつまみが欲しい。
しかも同時に欲しい。
今だからそう思える。

その店の腕の差が、お通しで判る事も今だから理解が出来る。

客に対しての店側のマナーも、店に対しての客のマナーもそれぞれ、
有るのだなァと今更ながら理解が出来る。

若僧の考えなど…………と、今だから思えるが、
今になって初めて解る事がどれだけ多いことか。
これから先も同じ事を繰り返すのであろう。私は…………

『自分なりの反省』


反省でもないが、お通しの必然性が解ってからは、
先輩達の云うことがたとえば間違っていると思っても、
まずは先輩方の意見を聞く様にしてみた。

必ずしも自分が正しいと思う事が正論ではない事が解ったのと、
昔の自分を振り返れば当然の事である。

白い靴下は止めろ、髪の毛は整髪料で整えろ、金は財布に入れろ、
人に会う時は………

今思えば当たり前の事だ。今更ながら両親に対しては、
もっと世間の常識を教えて欲しかったと文句を言いたい所だが、
言った所で何もならないので黙っておこう。
きっと何か事情が有ったのだろう。

旧国鉄の安月給の家庭と、当時の花形商社マンでは
世界観があまりにも違い過ぎただけである。

今でも納得が行かない事は語りきれないが、
今は無きマンション建設販売会社の創業者の言葉が今でも心に響く。

『世の中理不尽な事ばかり、皆妥協して生きてる。』

化粧品会社のトップセールスマンを経て、日本一のスピードでそのマンション
建設販売会社を東証二部上場迄引き上げた成功者でもそう考えているのかと、
私の浅はかさを思い知らされたものだった。

因みにそのトップセールスマンは、
未だ日本の化粧品会社のトップを走る会社の社長と一悶着を起こして
その会社を辞めたらしい。

一悶着とは…………

オーナー会社であったその会社に株式の上場を持ち掛け、
セールスマン達にも株を持たせて、共存共栄を図ろうと訴えたが、
その会社は家業で営んでいく経営姿勢なので、
株式の上場は絶対にしないとのこと。

その会社の姿勢に見切りを付け、彼はセールスの仕事を辞め、
結局その化粧品会社はトップセールスマンと、
大きな売上げを失う事となった訳である。

その後彼はマンション建設販売会社の創業者の一人となり、
株式上場を経て、一時は100億近い資産家となったのである。
何が正しいか、正しくないかは人それぞれ、

幸せの指標も人それぞれ、ただ1つ私が正しいと思うのは
面白い事を面白いと理解出来る能力こそ幸せの入口である、
と考えている。

『漢字時計を面白いと思う感性』






以前、『嘘』と言う漢字時計を仕立てさせてもらった事がある。
『愛』や『龍』、『舞』など一般受けしそうな漢字時計を展示していたが、
その客人は決して安くはない『嘘』と言う漢字を選んで注文を下さった。

その紳士はかなり幸せな人だと推測する。
誰も持っていない漢字時計を、何のためらいも無く注文下さる訳だから。

一般的に、人は他人が良いと評価する品物が好きである。
特に日本人はその傾向が強い。

自分が良いと思っても他人の評価を求めてしまう。

しかしその紳士は御自身の感性に忠実に行動なさっている。
その客人が今以上に幸せに、生活が楽しく成れるように、
世間に漢字時計を発表して、私も一層腕を奮って
今までのお客様の期待に応えたい。

随分と昔の漫談タレントの言葉を借りて、

『判るかなァ~、わかんねェ~だろうなぁ~』



(笑)表現が古いな………………


ものつくリスト  小柳 健一