2016/08/31 07:42

風林火山




『疾きこと風の如く』
『徐かなること林の如く』
『侵掠すること火の如く』
『動かざること山の如し』

甲斐の國の戦国大名、武田信玄の戦術を表す。
『風林火山』
と称されるその戦術はあまりにも有名である。

今回は見た目にも美しいこの漢字を『漢字時計』に仕立てようと考えた。
漢字四文字である。

今までは、デザイン的にも解りやすい一文字を仕立てていたので、

『風』『林』『火』『山』

を、1つずつ仕立てようと考えた時。

ン? ウ~~ン?
なんか今一つである。

『林』………… インパクトが小さい気がする。
『火』………… 単純過ぎて難しい。
『山』………… デザイン的に面白味に欠けてしまう。

結論から言うと、四文字で仕立てようと考えた。

その時からものつくりと言う戦術が始まる。

今、ブログを書いているのは、『横書き』
しかし、日本の古い文献等を辿ると殆どが『縦書き』である。

縦書きのレイアウトで、
円形の腕時計のケースの中に『風林火山』の四文字をデザインするには、
細かく成りすぎて見にくく成ることが目に見えている。

かと言って横書きのレイアウトも同じ事である。

結局、12時、3時、6時、9時の位置にレイアウトする事になった。

そう決めたはいいが、次はその四文字の配置である。
インターネット等を見てみると色々な配置が有る。

風 林
火 山

火 風
山 林

 風
火 山
 林

 火
風 林
 山

結局、時刻を読む順番で『風林火山』のレイアウトをすることに決めた。 



『イメージカラー』


今まではステンレスのケースにそのままの仕様で製作を続けてきたが、
風林火山、そのイメージは何かが違う気がする。

やはり『黒』であろうか。

あまり悩まずに黒色がしっくりくるような気がして、
黒色のメッキを施し文字盤も黒く塗装を施した。



『最初の難関』


漢字時計を製作するには、漢字その物のレタリングは勿論であるが、
短針、長針の二つに別けるデザインが物を云う。
バランスが大事である。

針の中心から外側に向けて全体的なバランスを心がけてデザインを起こしてゆく。

『そして切り出し』

仕上がったデザインに沿ってスターリングシルバーの板を切り出してゆく。

一発勝負。
今までの私のつたない経験では、2度、3度とやり直して、
良い結果が出た記憶がない。

もっと言うと、失敗したら次にやり直す気力がない。
そんな意気込みでカッターの刃を滑らせる。

▲「風林火山」の4文字を長針と短針に分けて切り出した画像。

『水平』


紙一重のすれ違いを作る為に、水平を出す。
どんな素材であっても密度のバラつきは避けられない。

スターリングシルバーの平板を切り出す際は、密度のバラつきが
その原因の1つであるが、切り出した瞬間は大きく波打っている。



それを修正するのも私の腕の見せどころである。

機械式腕時計は、歯車の集合体である。
正面から見ると必ず『ガタ』が存在する。

この『ガタ』とは機械が回転するのに必ず必要な隙間で、
これがないと機械は作動しない。

ボルト・ナット等のネジ類も同じである。
隙間を無くせば緩まないが、隙間が無いとしめられない。
此方を立てれば彼方が立たずである。

また、横から見ても同じく『ガタ』が存在する。

機械式腕時計は縦方向と横方向の『ガタ』の組み合わせである。
更にこの『ガタ』は中心から外側に向かってその幅は大きくなって行き、
漢字時計の針の先が一番大きな『ガタ』の幅になってゆくのである。

即ち、漢字時計の針を紙一重ですれ違わせるには、
中心の『ガタ』を如何に小さくするかが決め手である。

傷口は小さい方がやり直しが効く、
ものつくりは人生の縮図の様な物である。
大袈裟かも知れませんが……………

そんな、感じで今回は、



を製作してみた。

黒のフレームに合わせて、白いステッチの黒色のベルト。



如何でしょうか?


ものつくリスト  小柳健一